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【英語の聞き取りのコツ】ネイティブの発音ルールの「音声変化」を理解し、リスニング力を上達させる方法

英語の聞き取りができない理由とは?

英語を勉強している方が苦手なこと。それは、英語のリスニングです。例えば、TOEICやTOEFL、英検などのリスニングの問題を解いた後、解答を読んだときに、「実際に、ネイティブが話していたのは、こんなに簡単な文章だったのか!」と思われたことはありませんか?どうして、私たちは、簡単な英文を聞き取ることができないのでしょうか?

リスニングは3段階のプロセスがある

私たちが英語を聞くとき、3つのプロセスを経て、内容を理解しています。

①音を聞いて捉える(音声知覚)→
②聞いた内容を理解する(意味理解)→
③短い間聞いた内容を覚えておく(短期記憶)」 ということです。

下記の図のように、私たちはリスニングで※ワーキングメモリというコップの水を使い、そのコップの水を「①音を聞いて捉え(音声知覚)→②聞いた内容を理解する(意味理解)→③短い間、聞いた内容を覚えておく(短期記憶)」 に振り分けています。

もし、「音の聞き取り」の部分が苦手だと、音声知覚で脳の認知資源(コップの水)をほとんど使ってしまって、「意味理解」に使う水が不足してしまいます。だから、リスニングをしても、何を言っているか全くわからないという状態になるのです。これは、流れてきた英語の文章の内容を理解する前に、音を頭の中で英語にするだけで手いっぱいになっている状態です。

※ワーキングメモリ (working memory:作業記憶,作動記憶) とは,短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力のことを指します。会話や読み書き,計算などの基礎となる,私たちの日常生活や学習を支える重要な能力です。

そして、ほとんどの英語学習者の方は、音声知覚の能力が足りずに、リスニングができません。つまり、リスニングの1番最初のステップで、つまづいているということです。その理由はなぜでしょうか?

日本人が予想している音とネイティブが発音している音は異なる

その理由は、私たちが予想している音とネイティブが実際に発音している音が違うからです。

実は、ネイティブが英語を話すときには、言いやすいように音を省略したり、変化させたりして、私たちが学校で習うものとは違うような発音することがあるのですが、この変化のことを音声変化と言います。この音声変化を理解し、実際にご自身でも発音できるようにしていくことで、音声変化のスキルは身に付いていきます。音声変化のスキルが身に付けば、英語の発音の聞き取りが自然にできるようになります(自動化)。これは、「今から英語を聞くぞ!」 と意識を向けなくても英語が自然と聞き取れるような状態です。

例えば、車の運転をするときと同じように、最初はブレーキを踏むタイミング、バックミラーやサイドミラーを見るタイミングなど、意識しないとうまくできません。しかし、しばらく運転を続けるうちに、こういった作業に慣れて、無意識にできるようになります。これが自動化です。

英語の聞き取りのコツは「音声変化」のトレーニング

つまり英語のリスニング力を爆発的に上げるには、まず、音声変化を中心とした音声知覚の能力を上げ、自動化することが重要になります。音声変化を身につけるには、音声変化の知識を学んだ上で、音を聞いた後に繰り返す、「リピーティング」、音を聞いて真似して追いかける「シャドーイング」、または声に出して読む「音読」などのインプットのトレーニングが効果的です。

音声変化のルールは5つ

それでは、音声変化を学びましょう!読者の方は、次のように思われるかもしれません。

「音声変化の数は多いんでしょ?」
「内容が多すぎて覚えられない。」

上記のような心配をされるかもしれませんが、実は、音声変化はランダムに行われるのではなく、ある一定のルールに基づき、行われているので、ルールを覚えて、トレーニングすれば、リスニング力を飛躍的に上げることができます。

しかも、音声変化はたったの5種類しかありません。この5種類の音声変化を身につけるだけで、あなたは発音とリスニング力の両方を上達させることができます。

音声変化の種類は「連結」「同化」「ら行化」「脱落」「弱形」の5つです。それでは、これらの音声変化がどのようなルールで起こりやすくなるのか、順番に見ていきましょう。

音声変化①連結

まず1つ目の音声変化の「連結」は、単語どうしがつながって発音される音声変化です。

【ルール】単語の最後の子音と、次の単語の最初の母音が連続するとき。

英語の「母音」は、日本語の「アイウエオ」に近い音、「子音」はそれ以外の音を指します。

以下の「I have a car.」の例を見てください。「 “have” は母音 “e” で終わっているのに、子音?」と考えた人もいるかもしれませんね。注意すべき点は、単語の最後の子音というのは「発音上」の話であること。スペル上の見た目を指すのではありません。

英語はスペルと発音が完全に一致するとは限らない言語です。「have」は発音記号で表すと/hæv/。子音/v/で終わっていますね。したがって、語末の子音と次の語頭の母音がつながって発音される連結のルールが適用されるのです。

【例】
I have a car: アイ ハヴ ア ペン → アイ ハヴァ カー
an ant:アン アントゥ → アナントゥ
ride on:ライド オン → ライドン

音声変化②同化

2つ目の音声変化の「同化」は隣り合う音に影響を受けて、違う音に変わる音声変化。音声学的に厳密に分類すると、同化には細かく複数のパターンが存在します。

【ルール】/t/, /d/, /s/, /z/の音が後続の「y」(発音記号の表記は/j/)と混合するとき。

「y」の音と混ざり合うと、/t/, /d/, /s/, /z/はそれぞれ、/tʃ/「チュ」、/dʒ/「ヂュ」、/ʃ/「シュ」、/ʒ/「ジュ」のような発音に変わります。

【例】
I found you.:アイ ファゥンド ユー→アイ ファゥンヂュー
I won’t let you go.:アイ ウォント レット ユー ゴー→アイ ウォント レッチュー ゴー
I miss you.:アイ ミス ユー→アイミシュー

音声変化③ら行化

3つ目の音声変化の「ら行化」は、/t/や/d/の音が日本語の「ら行」のような音になる音声変化。アメリカ英語で起こりやすい傾向があります。日本語の「ら行」のような音を、音声学では「弾き音」と呼びます。アメリカ英語の話者とコミュニケーションをするときは、ら行化の音を習得しておくと、聞き取りやすいです。

【ルール1】/t/や/d/が母音に挟まれるとき。

【例】
Saturday:サタデイ→サラデイ
better:ベター→ベラー

【ルール2】/t/や/d/が母音と/l/に挟まれるとき。

【例】
battle:バトゥ→バロゥ
middle:ミドゥ→ミロゥ

音声変化④脱落

4つ目の音声変化の「脱落」はあるべき音が発音されない、あるいは聞こえにくくなる音声変化です。

【ルール1】破裂音が語末に来るとき。破裂音とは、/p/, /t/, /k/, /b/, /d/, /g/の音で、口のどこかで空気を完全にせきとめて、それを解放することで出す音のことです。

語の最後に破裂音が来ると、その音が聞こえなくなることがあります。ただしこれは、完全になくなってしまうわけではなく、実際には口の形はそのままに子音を出そうとしているのです。ただ、その状態から空気が出ないために、聞こえにくくなります。

以下の例をご覧ください。「Stop!」の/p/の音では、/p/を発音するときのように唇を閉じます。そのまま空気を出さずに発音を終えれば、/p/は聞こえず、日本語で言えば小さな「ッ」が入ったような感じに聞こえます。これが「脱落」です。

【例】
Stop!:ストップ→ ストッ(発音しないが、口は/p/の形)
last night:ラストゥ ナイトゥ→ラスツ ナイッ(発音しないが、口は/t/の形)
a cash card:ア キャッシュ カアド→ア キャッシュ カアッ (発音しないが、口は/d/の形)

【ルール2】[子音+子音]のとき。前に来る子音が脱落します。

以下の例を見てみましょう。「Good bye.」をスペル通りに発音すれば、/d/、/d/という破裂音を2回続けて出す必要がありますが、発音上面倒なため、1回の破裂で済ませます。

あくまで破裂を起こしていないというだけなので、「グッドデイ」ではなく「グッデイ」というふうに息を止めた感じの音になるのです。

【例】
good day.:グッド デイ→グッデイ
nice smell:ナイス スメゥ→ナイスメゥ

【ルール3】/t/, /k/, /d/が、子音と子音のあいだに来るとき。アメリカ英語のカジュアルな話し言葉で起こる音声変化です。

子音が3つ連続する場合も、真ん中に来る/t/, /k/, /d/といった子音が破裂なしで発音され、聞こえなくなることがあります。以下の図の「landmark」は、/ndm/というふうに子音が3つ連続しているので、真ん中の/d/の音はしばしば脱落します。

例】
landmark:ランドマーク→ランッマーク、ランマーク
lastly:ラストゥリー→ラスツリー、ラスリー

【ルール4】/nt/の連続で、/t/が脱落。アメリカ英語のカジュアルな話し言葉で起こる音声変化です。

以下の例を見てみましょう。「winter」の/t/の音が、前に来る/n/の音に引っ張られて、同じような音になり、「ウィンナー」のような発音に。また、完全に脱落してしまい「ウィナー」のような発音になることもあります。

【例】
winter:ウィンター→ ウィンナー、ウィナー
interview:インタヴュー → インナヴュー、イナヴュー

音声変化⑤弱形

最後の音声変化の「弱形」は弱く短く発音される音声変化。人称代名詞、前置詞、be動詞、助動詞などが代表的です。これらは「機能語」と呼ばれ、単語自体ではキーワードになりにくいものの、文法の機能として必要な語です。

機能語には、「強形」と「弱形」の2種類の発音があります。強形の発音をすでに中高で習った方も多いでしょう。しかしネイティブは、文で特に強調される場合を除き、「弱形」で読む場合がほとんどです。2種類の発音の存在は学校で習う機会がほぼないため、知っておくと非常に便利です。

対して、名詞や動詞、形容詞など、意味内容が多く含まれる語のことを「内容語」といいます。キーワードになれる言葉は、キーワードになりにくい言葉よりも、はっきりと伝えたくなりますよね。「内容語」は強く、「機能語」は弱く発音されるという傾向を知っておくと、英語が格段に聞き取りやすくなります。

【ルール1】人称代名詞

【例】
you: 強形 júː 弱形 ju, jə
he: 強形 híː 弱形 iː
her: 強形həːr  弱形 hər, ər

ルール2】前置詞

【例】
of: 強形 ʌv, ɑv, ɔv 弱形 əv
for: 強形 fɔːr 弱形 fər
to: 強形 tuː 弱形 (子音の前) tə, (母音の前) tu

【ルール3】be動詞

【例】
be: 強形 bíː 弱形 bi
an: 強形 ǽm 弱形 əm
is: 強形 iz 弱形 s, z

【ルール4】助動詞

【例】
will:強形 wil 弱形 wəl, əl, l
would: 強形 wud  弱形 wəd, əd
have: 強形 hæv 弱形 həv, əv

強形と弱形の違いが分かる例文

【例】
Our work begins at six.
Rob can see you.
This soup is easy to make.
*太字の単語が強く長く発音され、それ以外の部分は短く発音されることが多いです。

上記のように、弱形でよく出てくる発音が「曖昧母音」と呼ばれる/ə/。口をほとんど開けずに発音する「ア」をイメージすると、出しやすい音です。「曖昧母音」をマスターして、強弱のリズムをつけて読めるようになると、英語らしい自然な発音に近づきます。

まとめ

音声変化のルールは、以上の5つです。まずは5つの音声変化が起こるルールをしっかり覚えましょう。5つの音声変化のルールの解説は下記の動画でまとめていますので、是非、ご覧ください。ネイティブの英語が「速い」というのは、ただの「思い込み」です。「音声変化の5つのルールと条件を覚える」「覚えた音声変化のルールを使い、無意識に発音できるようになる」たったこれだけで、もうネイティブの英語が「速い」と感じなくなります。今回の音声変化の記事を参考に、細かいところまで聞き取れるリスニング力を身につけて、ビジネスシーンや日常英会話でお役立てください。

音声変化の解説動画

音声変化を練習する勉強法(補足)

言語学の世界では、インプットのトレーニングを行う際は※「i+1」、つまり「自分のレベルよりも少しだけ高いレベルのインプット」を行うことが重要だと言われています。リスニングでいえば、全部聴き取れる教材は、レベルが低すぎて、あまり効果はありません。逆に、流れてくることがほとんどほとんどわからない教材はレベルが高すぎ、学習の効果があまり得られません。1度効いて5〜8割は理解できるぐらいの教材を選びましょう。分からない部分は、倍速を落としてリピーティングやシャドーイングをしたり、何度も音読をして、確実に聴き取れるようにしていくと学習の効果が高まります。

※「i」は、学習者の言語レベルを指します。そして、現時点の自分のレベルよりも、ほんの少しだけ難しい課題が「i+1」です。
ご自身のレベルに合ったトレーニングをして、リスニング力を飛躍的に上げましょう!

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【プロフィール】

Toshiyuki Takiuchi(瀧内俊之)

関西学院大学で言語学、英語学、欧米文化について学ぶ。アメリカのエモリー大学で演劇科を専攻し、プレゼンの手法、舞台演出について学ぶ。帰国後は、ビジネスシーンやハリウッド俳優の通訳、NHKドラマで英語指導を担当。その後、大手英語コーチングスクールにて指導経験を積み、独立。ビジネス英語コーチングジム「 The DooR(ザ・ドアー)」のパーソナルトレーナーとして、TOEIC® L&Rの指導を行い、3か月で375点のスコアアップを記録。世界で活躍する起業家を育てる「Global Challenge」でビジネス英会話の指導を行い、受講生が、200組のうち、4組の選抜組に入賞。シリコンバレーの海外投資家にプレゼンする権利を獲得させた。日本の俳優に対し、ハリウッド・ブロードウェイへの進出をサポートする英語指導も行っている。YouTubeチャンネルのトシ先生のハリウッド英会話【海外映画・ドラマ】で英語学習やプレゼンのノウハウについて配信中。

Joseph DeChicchis(デキキス・ジョー)

関西学院大学総合政策学部教授。アメリカのペンシルベニア大学で言語学、イタリアのボローニャ大学で記号論、イギリスのサセックス大学で認知科学を学ぶ。現在は言語学、人類言語学、欧米文化コミュニケーションの研究に従事。世界の英語アクセントに精通している。関西学院大学の研究生に対し、言語学や認知科学、英語習得法について指導している。The DooRでは、カリキュラムアドバイザーとして、発音矯正、文法理論、スピーキングスキルの強化など、受講生に対する英語コーチング指導のアドバイスや、教材の監修を担当している。

 

Mitsuru Arakawa(荒川満)

大学卒業後、大手人材紹介会社に入社。大阪支店にて人材紹介の営業に従事。同グループのイギリス法人にて営業マネージャーとして営業体制の再構築を担当、取締役に就任し海外法人の経営に携わる。帰国後、東京本社にて海外就職希望者の海外転職、日系企業の海外進出を支援する部門のマネージャーとして勤務。同社を退職後、シンガポールにてArchAgent Pte Ltdを設立し、代表取締役社長を務める。The DooRでは、グローバルキャリアアドバイザーとして、英語面接の対策、英文レジュメの作成、海外での起業など、キャリアアップに関する英語コーチング指導のアドバイスを行っている。

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