英語学習ブログ

【睡眠で英語力を伸ばす】仕事や勉強の効率を上げる3つの “コツ”を英語コーチが解説!

睡眠不足は英語学習の敵

「仕事が忙しいから、今日は深夜から勉強しよう。」
「TOEICが近いから、寝ないで英語を学習しよう。」

こういった経験はありませんか?もし、当てはまったら、英語学習に挫折してしまう、もしくはすでに挫折してしまった方が多いでしょう。英語力を身につけるには、継続的に学習することが必要だからです。睡眠時間を削ると、健康や思考能力の低下を招き、仕事も英語学習もうまくいきません。英語学習を成功させるには、十分な睡眠をとり、毎日の学習を習慣化することが必要です。

十分な睡眠が英語学習を成功させる

英語学習に睡眠時間が重要だというのには、大きく分けて2つの理由が存在します。

1.心身の健康を守り、学習の生産性を上げるため

仕事や学習を終わらせるために、無理やり睡眠時間を削ると、効率が悪いだけでなく、健康を損ねてしまいます。睡眠時間は仕事や学習のパフォーマンスに大きな影響を与えます。もし、無理やり睡眠を削って、学習をすると、下記のような負のループに陥り、英語学習に挫折します。

寝不足によって学習が挫折するまでの流れ

夜遅くまで学習をする→寝不足になる→学習の生産性が下がる→学習が進まない→それを補うために、長時間学習する
→さらに寝不足になる→さらに学習の生産性が下がる→学習が進まない→学習に挫折する

このように、その場しのぎで、夜遅くまで学習すると、寝不足になり、学習の効率を下げ、また、寝不足になるという負のループに陥ります。この負のループに入った学習者は、成果を出せずに、学習を挫折することになります。逆に、適切な睡眠をとっていれば、心身を健康に保ち、効率よくが学習することができます。

2.学習した内容の記憶を定着化させるため

人間の脳は、入ってきた情報を一時的に海馬と呼ばれる器官に一時的に保存し、その後、大脳新皮質へと移すことで記憶を定着、保持します。記憶の定着化において、睡眠は非常に重要です。ドイツのリューベック大学のスザンヌ・ディーケルマン氏の研究によると、人間は、睡眠を開始した直後から記憶の定着を始めるとのことです。ディーケルマン氏は、語学学習にも効果が期待できると述べています。さらに、滋賀医科大学精神医学講座の栗山健一准教授らの研究によると、睡眠によって短期記憶の能力そのものが向上することが、分かっています。このように、睡眠は英語学習の一部であると言っても、過言ではないでしょう。

睡眠を英語学習に活かす3つのコツ

それでは、どのようにすれば、睡眠を英語学習に活かすことができるのでしょうか?その方法は大きく分けて3つあります。

① 寝る直前の30分間に暗記する

滋賀医科大学教授の山田尚登氏によると、学習してから記憶を定着させるのに、睡眠までの時間は短いほどよいと話されています。特に、就寝30分前は「暗記のゴールデンタイム」です。就寝直前の30分間(長くても1時間)に、英単語など、論理的思考を必要としないものを暗記の時間にしましょう。

山田氏によると、「覚えたことを忘れたくないから、眠らない」のは記憶の定着化においては逆効果とのことです。なぜなら、眠らないでいると、眼や耳からさまざまな刺激が飛び込んでくるために、せっかく覚えたことの多くを忘れてしまうからです。下記の図のように、ものを覚えてから、同一時間経過後の記憶量を比較すると、記憶してから眠るまでの時間が短い人ほど、多くのことを覚えていることがわかっています。

「就寝までの時間と記憶量の関係」Suimin.netより抜粋

② 必ず次の日までに復習をする

就寝前に覚えた単語は翌日に必ず復習するようにしましょう。復習するタイミングが後になるほど、覚え直すのに多くの時間がかかってしまうからです。ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、「忘却」に焦点を当て、無意味綴りと呼ばれる実験を行いました。これは、被験者に子音・母音・子音から成る3文字の無意味な文字列ー(例 pis mek tasなど)を覚えさせ、忘れた頃に再び覚えさせる、ということを繰り返し行った実験です。

エビングハウスはこの実験から、人間に記憶を定着させる上で重要になる復習のタイミングを可視化しました。この忘却曲線では、2回目以降に覚え直す際、最初に覚えた時と比べて、完全に覚えるのにかかる時間をどれだけ節約することができたかを示す割合である「節約率」が明記されています。節約率が高いほど「楽に記憶することができる」ことを表します。その結果が以下の通りです。

20分後:58% 1時間後:44% 約9時間後:35% 1日後:34% 2日後:27% 6日後:25% 1ヶ月後:21%

このように、効率的に覚えるには、始めに記憶してから復習するまでの時間が短いほど、効率よく記憶することができます。就寝してから遅くとも、翌日までに覚えると効率よく記憶することができます。就寝前に英単語を覚えたら、翌日の朝に復習することが最も効率的な学習法です。

③ 20分以内の昼寝「パワーナップ」をする

英語学習を効率よく行う上で、昼寝も重要です。昼間に30分以内の仮眠をとることを「パワーナップ(Power Nap=積極的仮眠)」と言います。GoogleやNikeなどの先進的な大企業では、短時間で効率的に睡眠を補い、脳の疲労を回復させる睡眠法「パワーナップ」を推奨しています。実際に、NASA(米航空宇宙局)の研究では、パイロットや宇宙飛行士に26分の昼寝をさせてみると、寝起き後の認知能力が34%上昇し、注意力については54%向上したと発表しています。

“Referring to a 1995 study from Nasa, which he co-authored, NTSB member and fatigue expert Mark Rosekind said that a 26-minute nap would improve performance by 34% and alertness by 54%.”

パワーナップ」を実践することで、下記の3つのメリットが得られます。

● 記憶力が向上する
● 集中力が向上する
● 疲れがとれて、リフレッシュできる

単語学習において、これは非常に有効です。ハーバード大学のハーベイ・サイモン博士によると、ドイツの研究では、6分間の仮眠だけで、事前に覚えていた30単語を再度思い出すのに効果があったとのことです。

“In a German study, a six-minute snooze helped volunteers recall a list of 30 words they had memorized earlier.”

パワーナップを実践する上での注意点

1. 15〜20分以内に抑える

カリフォルニア大学・バークレー校の神経科学者マシュー・ウォーカー教授の研究によると、20分ほどで訪れるノンレム睡眠のステージ2において、脳内に集まった情報の整理をするとのことです。パワーナップの間に脳の情報整理がされ、身体に良い効果をもたらすのです。しかし、30分以上の眠りになると、今度は深い眠りに入ってしまい、目覚めたときに、眠りたりない状態で、寝起きの状態になってしまいます。パワーナップは15〜20分程度にするのがベストです。

2. 昼食後から、午後3時までに実施する

パワーナップの実践はタイミングが重要です。睡眠時間が20分で良いとなるとお昼休みでも睡眠ができます。昼食後は、眠気が来るので、午後の就業開始に合わせてパワーナップをするのが理想的です。なぜなら、パワーナップの効果は午後3時までの仮眠に限定されるという説が一般的だからです。3時を過ぎてしまうと、夜の睡眠に影響を与えてしまい、不眠や睡眠障害につながるおそれがあります。夜の睡眠時間に悪影響を与えるようでは本末転倒です。パワーナップは午後3時までに実施しましょう。

まとめ

上記記事について、下記の動画でも解説をしております。

英語学習には、睡眠が重要な理由は2つありました。
①心身の健康を守り、学習の生産性を上げるため
②学習した内容の記憶を定着化させるため

睡眠を英語学習に活かすコツは3つありました。
① 寝る直前の30分間に暗記する
② 必ず次の日までに復習をする
③ 20分以内の昼寝「パワーナップ」をする

睡眠を英語学習に活かし、毎日継続して英語力を上げていきましょう。


参考文献

The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation.

Sleep helps learning, memory by Harvey B. Simon, MD

suimin.net すこやかな眠りのために

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-13232034

https://www.sleepcycle.com/how-to-fall-asleep/how-to-power-nap-like-a-pro/

Why We Sleep: Unlocking the Power of Sleep and Dreams by Matthew Walker

【プロフィール】

Toshiyuki Takiuchi(瀧内俊之)

関西学院大学で言語学、英語学、欧米文化について学ぶ。アメリカのエモリー大学で演劇科を専攻し、プレゼンの手法、舞台演出について学ぶ。帰国後は、ビジネスシーンやハリウッド俳優の通訳、NHKドラマで英語指導を担当。その後、大手英語コーチングスクールにて指導経験を積み、独立。ビジネス英語コーチングジム「 The DooR(ザ・ドアー)」のパーソナルトレーナーとして、TOEIC® L&Rの指導を行い、3か月で375点のスコアアップを記録。世界で活躍する起業家を育てる「Global Challenge」でビジネス英会話の指導を行い、受講生が、200組のうち、4組の選抜組に入賞。シリコンバレーの海外投資家にプレゼンする権利を獲得させた。日本の俳優に対し、ハリウッド・ブロードウェイへの進出をサポートする英語指導も行っている。YouTubeチャンネルのトシ先生のハリウッド英会話【海外映画・ドラマ】で英語学習やプレゼンのノウハウについて配信中。

Joseph DeChicchis(デキキス・ジョー)

関西学院大学総合政策学部教授。アメリカのペンシルベニア大学で言語学、イタリアのボローニャ大学で記号論、イギリスのサセックス大学で認知科学を学ぶ。現在は言語学、人類言語学、欧米文化コミュニケーションの研究に従事。世界の英語アクセントに精通している。関西学院大学の研究生に対し、言語学や認知科学、英語習得法について指導している。The DooRでは、カリキュラムアドバイザーとして、発音矯正、文法理論、スピーキングスキルの強化など、受講生に対する英語コーチング指導のアドバイスや、教材の監修を担当している。

 

Mitsuru Arakawa(荒川満)

大学卒業後、大手人材紹介会社に入社。大阪支店にて人材紹介の営業に従事。同グループのイギリス法人にて営業マネージャーとして営業体制の再構築を担当、取締役に就任し海外法人の経営に携わる。帰国後、東京本社にて海外就職希望者の海外転職、日系企業の海外進出を支援する部門のマネージャーとして勤務。同社を退職後、シンガポールにてArchAgent Pte Ltdを設立し、代表取締役社長を務める。The DooRでは、グローバルキャリアアドバイザーとして、英語面接の対策、英文レジュメの作成、海外での起業など、キャリアアップに関する英語コーチング指導のアドバイスを行っている。

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