イギリス英語の聞き取り力が劇的に変わる!リンキングRと割り込みのRを科学×体験談で解説

リンキングRと割り込みのRとは?英語発音の隠れた重要ポイント
イギリス英語の発音をより正確に聞き取るためには、『リンキングR(linking R)』と『割り込みのR(intrusive R)』という、非R音性の英語特有の音声変化を理解することが非常に重要です。特に私たち日本人の英語学習者には、まだあまり知られていないかもしれませんが、イギリスやオーストラリアといった地域で話される英語では、原則として語尾の『r』の音は発音されません。しかし、このルールには例外があり、それがリンキングRと割り込みのRなのです。
この記事では、イギリス英語特有のリンキングRと割り込みのRという発音現象が、どのような状況で起こるのかを分かりやすく解説し、具体的な練習方法もご紹介します。これらの発音の仕組みを理解することで、海外旅行はもちろんのこと、国際的なビジネスの場面においても、よりスムーズで効果的なコミュニケーションができるでしょう。
非R音性とは?英語の方言による発音の違い
「非R音性(non-rhotic)」とは、英語の音の一種である「r」を、単語の最後や母音の前に来た場合に発音しないという特徴を指します。この発音の特徴は、主にイギリス英語、オーストラリア英語、ニュージーランド英語、そして南アフリカ英語といった地域で話される方言に見られます。これに対し、アメリカ英語やカナダ英語では、「r」がどのような位置にあっても基本的に発音する「R音性」という特徴があります。
例えば、”car”(車)という単語を発音する場合、R音性の方言では /kɑːr/ (カー)と「r」の音をはっきりと発音しますが、非R音性の方言では /kɑː/ (カァ)のように「r」の音を弱めるか発音しません。この非R音性の特徴を持つ方言において特に重要になってくるのが、「リンキングR」と「割り込みのR」という現象です。これらは単に「r」を発音しないというだけでなく、特定の条件下では「r」の音が復活したり、本来「r」がない場所にも「r」の音が現れたりする興味深い現象なのです。

R音性と非R音性の具体例
R音性(アメリカ英語など)と非R音性(イギリス英語など)の違いをいくつかの単語で比較してみましょう。
単語 | R音性(例:アメリカ英語) | 非R音性(例:イギリス英語) |
---|---|---|
car | /kɑːr/ カー | /kɑː/ カァ |
father | /ˈfɑːðər/ ファーザー | /fɑːðə/ ファーザァ |
mother | /ˈmʌðər/ マザー | /mʌðə/ マザァ |
非R音性の英語を話す人々は、単語が単独で発音される場合や文の終わりにある場合は「r」の音を発音しない傾向がありますが、このことが次に説明する「リンキングR」や「割り込みのR」の現象につながっていくのです。
リンキングRの仕組みと実践例
「リンキングR」とは、非R音性の英語において、本来「r」の文字がある単語の後に母音で始まる単語が続く場合に、通常は発音しない「r」の音が「復活」して発音される現象です。これは単語間をスムーズにつなげる役割を果たします。例えば、”far away”(遠く離れて)という表現では、単独では「r を発音しない」 /fɑː/ と発音されますが、母音で始まる “away” の前に来ることで「r」を発音するようになります。これにより、二つの単語が滑らかにつながり、より自然な発音になるのです。
リンキングRの具体例
以下に、リンキングRが起こる典型的な例をいくつか紹介します。
フレーズ | 発音(IPA + カタカナ) |
---|---|
here and there | /ˈhɪə(r) ən ðeə/(ヒア[r]アン ゼア) |
fear of | /fɪə(r) ɒv/(フィア[r]オブ) |
more apples | /mɔː(r) æplz/(モア[r]アップルズ) |
for example | /fɔː(r) ɪɡˈzæmpl/(フォア[r]イグザンプル) |
リンキングRを意識して練習することで、非R音性の英語(特にイギリス英語)をより自然に話すことができるようになります。日本人の英語学習者は特に、単語を一つ一つ区切って発音する傾向がありますが、このリンキングRを使いこなすことで、より流暢でネイティブのような英語を話せるようになるでしょう。
割り込みのRの特徴と日常会話での使い方
「割り込みのR」は、非R音性の英語に見られるもう一つの興味深い現象です。これは、もともとスペルに「r」の文字がない単語の後に、母音で始まる別の単語が続く場合に、二つの単語をつなげるために「r」の音が「挿入」される現象を指します。
特に、単語が /ə/ や /ɔː/ などの音で終わり、次の単語が母音で始まる場合に割り込みのRが発生しやすくなります。これは、二つの母音が連続することによる発音の不自然さを解消するための、言語的な工夫と考えられています。
割り込みのRの具体的な例文
以下に、割り込みのRが起こる典型的な例をいくつか紹介します。
フレーズ | 発音(IPA + カタカナ) |
---|---|
idea of | /aɪˈdɪə(r) ɒv/(アイディア[r]オブ) |
Australia is | /ɒˈstreɪliə(r) ɪz/(オーストラリア[r]イズ) |
law and order | /lɔː(r) ən ˈɔːdə/(ロー[r]アン オーダー) |
area of | /ˈeəriə(r) ɒv/(エリア[r]オブ) |
opera is | /ˈɒpərə(r) ɪz/(オペラ[r]イズ) |
割り込みのRは、特にイギリス英語やオーストラリア英語のネイティブスピーカーの自然な会話でよく観察される現象です。彼らは意識せずにこの発音パターンを使用していますが、英語学習者がこの現象を理解し、適切に使用できるようになれば、スムーズにこれらの音声変化を聞き取ることができます。
割り込みのRを使いこなすコツ
割り込みのRを自然に使いこなすためには、以下のポイントを意識するとよいでしょう。
- /ə/ や /ɔː/ などの音で終わる単語の後に母音が来る場合、軽く「r」の音を入れる練習をする。
- イギリス英語やオーストラリア英語のネイティブスピーカーの会話を注意深く聞き、割り込みのRの使用パターンを観察する。
- 無理に強い「r」の音を入れるのではなく、自然につながるように軽く発音する。
- 最初は意識的に練習し、徐々に自然な会話の中で使えるようにする。
割り込みのRは、文法的には「正しくない」と考える人もいますが、実際には多くのネイティブスピーカーが日常的に使用している自然な言語現象です。特にフォーマルではない日常会話では、この現象を理解し活用することで、より自然な英語の発音に近づくことができます。
リンキングRと割り込みのRの違いと使い分け
リンキングRと割り込みのRは似た現象ですが、重要な違いがあります。その違いを理解し、適切に使い分けることが、非R音性の英語を正確に聞き取るために不可欠です。
リンキングRと割り込みのRの主な違い
リンキングRと割り込みのRはどちらも似た現象ですが、重要な違いがあります。その違いを理解し、適切に使い分けることが、自然な英語の発音のためには不可欠です。
項目 | リンキングR | 割り込みのR |
---|---|---|
発生条件 | 前の単語が /ɑː/, /ɔː/, /ə/ などの母音で終わり + 単語末に⟨r⟩の綴りがあり + 次の単語が母音で始まる | 前の単語が /ɑː/, /ɔː/, /ə/ などの母音で終わり + 単語末に⟨r⟩の綴りがない + 次の単語が母音で始まる |
イメージ | 隠れていた「r」が復活 | どこにもいなかった「r」が新たに挿入 |
例(単語+例文) | car /kɑː/ → car engine /kɑː(r) ˈɛnʤɪn/ | idea /aɪˈdɪə/ → idea of /aɪˈdɪə(r) ɒv/ |
フォーマル度 | フォーマル・カジュアル両方で使用可 | カジュアル寄り(フォーマルでは控えめが無難) |
リンキングRと割り込みのRを使い分けるポイント
リンキングRは、語末に r の文字がもともと存在し、その音が「復活」して現れる現象です。このため、フォーマルな場面でも自然に使うことができます。一方、割り込みのRは、本来「r」のない語に音が「挿入」される現象で、カジュアルな会話ではよく用いられますが、フォーマルな席では控えめに使うのが無難です。
これらの発音現象は、語尾の「r」を発音しない非R音性(イギリス英語など)を学ぶうえで非常に重要です。ただし、世界では、語尾の 「r」をしっかり発音するR音性(アメリカ英語など)も幅広く使われています。グローバルなコミュニケーションを考えるなら、両方の特徴を理解しておくことが欠かせません。
なお、下記の記事では、大学時代から親しくしている言語学者・今西先生より、R音性英語が生まれた歴史的背景やその広がりについて貴重なお話を伺いました。興味のある方は、ぜひ併せてご覧ください。

イギリス出張で体験した「リンキングR」と「割り込みのR」
私は、大学で言語学や英語音声学を学んでいたので、イギリスでは多くの人が語尾の /r/ を発音しないことは、知っていました。しかし、大学卒業後、初めてイギリスへ出張した際の二つの出来事が、私の /r/の発音に関する認識を大きく変えたのです。
体験①営業ミーティングで聞いた「リンキングR」
海外営業として、イギリスへ出張した際、取引先の担当者がプレゼンの中でこう言いました。
“Here is the report.” /hɪə(r) ɪz ðə rɪˈpɔːt/ ヒア[r]イズ ザ リポート
文中の “here” は通常 /hɪə/(ヒア)と発音され、r の音は省略されます。しかし、“is” という母音で始まる語が続くことで、“here” の語末に隠れていた r が復活し、/hɪə(r) ɪz/ のようにつながります。つまり「ヒア r イズ」と聞こえたわけです。最初は「あれ?『r』の音が聞こえるのはおかしいな」と不思議に思いました。これは、知識として持っていた「語末のrは発音しない」というルールと矛盾するわけではありません。後に続く単語が母音で始まる場合、音を滑らかに繋げるために、普段は発音されないrが“戻ってくる”のです。まさにその瞬間を肌で感じた体験でした。
体験②カフェで聞いた「割り込みのR」
移動中に立ち寄ったカフェで、隣の女性が友人に “great idea(r) of yours” と話すのを耳にしました。スペルに r がない idea に r が割り込む—リスニングには問題ないものの、理由がわからずモヤモヤが残りました。これが “割り込みの R を初めて聞いた経験でした。
帰国後のリサーチとレッスンへの応用
帰国後、大学時代からの恩師であり、また、私が運営するビズイングリッシュコーチのカリキュラムを監修してくださっているデキキス先生にこれらの件について質問したところ、「リンキングR」や「割り込みのR」という現象だと教えていただきました。また、イギリス英語音声学の書籍を読み、非R音性に特有の “リンキング/割り込み” のRのルールを体系的に理解しました。
現在はコーチングで 「消える r と、戻る/現れる r」 をセットで教え、受講生のリスニング力向上と知的好奇心を高める上で大きな効果を感じています。あなたも今日からニュースや映画でリンキング R と割り込み R の発音を聞いてみましょう。
日本人がリンキングRと割り込みのRを習得するためのコツ
日本人英語学習者にとって、リンキングRと割り込みのRの概念は馴染みが薄く、習得が難しいと感じるかもしれません。しかし、以下のコツを実践することで、これらの発音を効果的に身につけることができます。
- 意識的なリスニング練習: イギリス英語やオーストラリア英語の音声教材や動画コンテンツに触れ、リンキングRと割り込みのRが実際にどのように使われているかを注意深く聞く練習をしましょう。
- 段階的な発音練習: まずはリンキングRから練習を始め、慣れてきたら割り込みのRにも挑戦しましょう。単語と単語をゆっくりとつなげることを意識し、徐々にスピードを上げていくと効果的です。
- シャドーイングの活用: ネイティブスピーカーの発音に合わせて、影のように少し遅れて発音するシャドーイングは、リンキングRと割り込みのRの感覚を掴むのに非常に有効な練習方法です。
- 日本語の発音との違いを理解する: 日本語には単語と単語の間をつなげるような「r」の音は存在しないため、意識的に新しい音として捉え、練習する必要があります。

リンキングRと割り込みのRがもたらす英語コミュニケーションの向上効果
リンキングRと割り込みのRを適切に使いこなせるようになると、英語のコミュニケーション能力は大きく向上します。
- リスニング理解度の向上: ネイティブスピーカーの自然な発話をより正確に聞き取れるようになり、特にイギリス英語やオーストラリア英語の理解が深まります。
- 流暢さと自然さの向上: 単語と単語の間がスムーズにつながり、発音のリズムとイントネーションがより自然になります。
- 異なる英語方言への適応力: イギリス英語やオーストラリア英語などの非R音性の方言と、アメリカ英語などのR音性の方言の違いをより深く理解し、状況や相手に応じて発音スタイルを調整できるようになります。
まとめ:リンキングRと割り込みのRの効果的な活用法
この記事では、英語の発音における「リンキングR」と「割り込みのR」という重要な現象について詳しく解説してきました。これらは特に非R音性の英語(イギリス英語やオーストラリア英語など)において顕著に見られる現象で、自然で流暢な英語の発音を身につけるためには非常に重要な要素です。
これらの発音テクニックを習得することで、以下のような効果が得られます。
- 自然で流暢な英語発音を身につけ、ネイティブスピーカーとのコミュニケーションをより効果的に行えるようになる。
- 様々な英語の発音(特に非R音性の発音)をより深く理解し、適切に対応できるようになる。
- より高度な英語学習へと進み、言語としての英語への理解を深める。
英語の発音は、文法や語彙と同様に、非常に重要なコミュニケーションの要素です。特にリンキングRと割り込みのRのような、一見すると細かい発音の特徴を理解し、習得することで、あなたの英語はより自然で、より効果的なものになるでしょう。
リンキングRと割り込みのRを身につける学習プラン
リンキングRと割り込みのRを効果的に習得し、活用するための具体的な学習プランを以下に示します。
- 毎日5分で良いので、イギリス英語のニュースや映画を視聴し、リンキングRと割り込みのRが使われている例をそれぞれ5つずつメモしてみましょう。
- メモした例を使って、毎日10分間発音練習をしてみてください。もし可能であれば、ご自身の発音を録音して確認してみるのがおすすめです。
- イギリス英語のオーディオブックやポッドキャストを利用して、シャドーイング練習を毎日15分間行ってみましょう。
- リンキングRと割り込みのRを使った短い文章を自分で作って、自然に発音できるようになるまで練習してみましょう。
- 日常会話や英語でのプレゼンテーションなど、英語を使う機会に意識的にこれらのテクニックを取り入れてみましょう。そして、定期的に自分の発音を録音して、上達具合を確認してみてください。
ぜひ、今日から学習を始めてみましょう。英語学習がまだ習慣になっていないという方は、まず小さな目標から始めることが大切です。無理なく達成できる目標を一つずつクリアしながら、少しずつ学習量を増やしていくのが継続する秘訣です。科学的に根拠のある「タイニーハビット」について詳しく知りたい方は、ぜひ下記の記事をご覧ください。

参考文献
・Cruttenden, A. (2014). Gimson’s Pronunciation of English (8th ed.). Routledge.
・Wells, J. C. (1982). Accents of English. Cambridge University Press.
・Lindsey, G. (2019). English After RP: Standard British Pronunciation Today. Palgrave Macmillan.
・Roach, P. (2021). Phonetics (4th ed.). Oxford University Press.
・Foulkes, P., & Docherty, G. J. (2006). The social life of phonetics and phonology. Journal of Phonetics.
・BBC Learning English. (2017). “Linking and Intrusive R.”
・Lewis, J. W. (2009). Linking /r/ in the General British pronunciation of English. Journal of the International Phonetic Association. Cambridge University Press.
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(Toshiyuki Takiuchi)関西学院大学で言語学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学を修め、米国エモリー大学でアクセントトレーニングを研究。帰国後は海外営業や通訳、ハリウッド俳優への発音指導など、多彩な現場で実績を積む。その後、大手スクールでの指導を経て、受講生一人ひとりのニーズに合わせた英語コーチングを行うため、ビズイングリッシュコーチを設立。
- 学習カリキュラム監修者
デキキス・ジョー教授
(Joseph DeChicchis)関西学院大学総合政策学部教授。言語学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学を専門とし、日本人が最短で英語を習得できる「時短学習メソッド」を開発。ビズイングリッシュコーチでは、受講生一人ひとりの課題に合わせたカリキュラムやオリジナル教材を監修し、学習効果を最大化するサポートを行う。