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契約交渉を英語で!合意条件に反対した商談相手を説得し、クロージングする“営業テクニック”『ビジネス英語』

世界でオンラインの商談や電子契約が増加

ウィズコロナの時代になり、海外の企業とテレビ会議で商談した後、電子契約を結ぶケースが増えています。JIPDEC・ITRが調査した「IT-REPORT 2021 Spring」によると、国内の電子契約の普及率は67.2%になっており、「今後の電子契約の採用を検討中」の企業を加えると実に、84.9% を占めます。欧米を中心とする海外は、日本のように書面に印鑑を押す文化がないため、電子契約がすでに、スタンダードになっています。

海外企業との商談では、反対意見を覆す「営業手法」が必要

テレビ会議では、商談相手の表情があまり見えないので、コミュニケーションが難しいです。そのため、契約を成立させるには、ビジネスレベルの「英語力」と、自社商品の魅力を簡潔に伝える「営業テクニック」が必要です。

近年は、インターネットで手軽に商品の情報を手に入ります。一般的に、商談相手は、自社の商品について調べており、営業の提案に対して、有利な条件で契約するため、商品に対する懸念事項を出し、一度、契約の合意に「反対」します。法人や個人を問わず、価格交渉のために、このような「反対意見」が出ることが多いです。

商談相手からの反対意見を嫌う方もいらっしゃるでしょう。しかし、効果的な「営業テクニック」があれば、「反対意見」でさえも、「信用」に変えることができます。この営業技術が、契約を成立させる武器となります。

セールスの専門家(ブライアン・トレーシー氏)の営業テクニック

この記事では、ビジネス英語コーチの筆者が、セールスの専門家であるブライアン・トレーシー氏(Brian Tracy)が実践する「営業テクニック」や「英語フレーズ」について解説します。このテクニックやフレーズを使うと、あなたは、商談相手の「反対意見」を「信用」に変え、契約を成立させることができます。

※ブライアン・トレーシー氏(Brian Tracy)は、カナダ・プリンスエドワードアイランド州出身の自己啓発作家、ビジネス書作家、経営コンサルタント、講演家、実業家です。アメリカでモチベーション・コーチとして高い評価を獲得している人物であり、アメリカやカナダの著名企業などのコンサルタントとしても活躍しています。

「objection(反対意見)」の定義

まず①の「反対意見に切り返すフレーズ」ですが、営業担当の方が「反対意見」をどのように捉えるかが重要になります。トレーシー氏(Brian Tracy)は、「objection(反対意見)」について、下記のように、述べています。

The fact is that objections are good. Objections indicate interest. And successful sales have twice as many objections as unsuccessful sales.
「事実、反対意見は良いものです。反対意見は(商品への)関心を示唆しているからです。売り上げの高い営業の方は、売り上げの低い営業に比べて、2倍の反対意見をもらっています。

To handle objections effectively, you should hear them out completely, without interrupting. Remember, listening builds trust, even with objections.
「効果的に、反対意見に対処する方法は、商談相手の話を遮ることなく、最後まで聞くことです。覚えておいてください。傾聴は、反対意見ですら、信用に変えるのです。」

「反対意見を信用に変える」英語フレーズとテクニック

「反対意見を信用に変える」英語フレーズ①

1)”How do you mean?”
「どのような意味(意図)でしょうか?」

相手の言っていることは理解しているが、話の意図やより詳しい情報を聞きたい時に使うフレーズです。商談相手がこの質問に答えないことはあり得ません。何度も使える便利な英語表現です。“How do you mean, exactly?”「正確には、どのような意味(意図)でしょうか?」の表現でも代用できます。

※「What do you mean? (どういう意味でしょうか?)」は相手の話した意味自体がわからない場合に用いるので、自分の英語力の低さを露呈します。ビジネスシーンでは、なるべく使わない方が良いです。

「反対意見を信用に変える」英語フレーズ②

2)”Do you have a good reason?”
「正当な理由はありますか?」

a good reasonは「正当な理由」という意味です。商談相手や顧客が、正当な理由がなく、「商品を購入しない」と反対している場合も多いです。「なぜ、購入したくないのか」という理由を明確にする必要があります。さらに、丁寧に確認をしたい場合は、次の英語表現が適当です。

「反対意見を信用に変える」英語フレーズ③

3)“Obviously you have a good reason for saying that, do you mind if I ask what it is?”
「明らかに、その発言をする正当な理由がありますね。その理由をお知らせいただいてよろしいでしょうか?」

「do you mind if S(主語)V(動詞)」で、「SがVするのを気にされますか?」と相手に許可を求める丁寧な表現です。ビジネスシーンだけでなく、日常会話でも使える表現なので、是非覚えましょう。

「反対意見を信用に変える」“3F ”テクニック

「3F “Feel, Felt,  Found” method」テクニック

Feel「感じる(現在形)」、Felt「感じた(過去形)」 、Found「わかった(過去形)」を使って商談相手へ切り返す共感型の営業手法です。

商談では、必ずと言っていいほど、取引先や顧客は、「高すぎる」と言います。営業担当のあなたは、次のように回答します。

Feel「感じる(現在形)」→商談相手に「共感」する

“I understand exactly how you feel.”
「お気持ちが正確にわかります。」

Felt「感じた(過去形)」→商談相手に再度、「共感」する

“Others felt the same way when they first heard the price. ”
「他のお客様も最初価格を聞いた時に、同じように感じておりました。」

Found「わかった(過去形)」→商談相手に「発見」を伝える

“But this is what they found when they began using our product or service.”
「しかし、お客様が、弊社の商品、(もしくは、サービス)を使い始めてから、次のことがわかりました。」

「this is what they found」は「彼らは次のことが、わかりました。」という意味です。「this」は次の文を指します。この英文の後に、営業担当のあなたが、商品を購入するメリットや付加価値を説明します。すると、商談相手は、「商品価値が値段を大きく上回る」と納得してくれます。

営業の専門家であるトレーシー氏は、契約合意の反対理由について次のように、述べています。

 Fully 94% of sales in America are made on a non-price basis. Virtually, every objection on the basis of price is made for a reason other than price. Your job is to find the real reason.
アメリカの94%の販売活動は価格を基準に行われていません。価格に対する反対意見は、実は、価格以外の理由から生まれています。あなたの仕事は、真の反対理由を見つけることです。」

トレーシー氏の言葉で、営業成績は、値段ではなく、商品価値を正しく伝えることが出来たかどうかで決まることが分かります。

契約前の「最終確認」の英語フレーズ

商談の最終的なゴールは、契約に合意してもらうことです。契約の話にもっていくためには、商談相手が商品やサービスの情報について、理解していることが重要です。必ず、次の質問をするようにしましょう。

“Do you have any questions or concerns so far?”
「ここまでのお話で、ご質問や懸念点はございますか?」

商談相手が”No” と回答したら、契約の話へ移りましょう。

「契約合意へ導く」3つのクロージングテクニック

1)“Give It A Try”「試してみましょう」

“Why don’t you give it a try?”
「試してみてはいかがでしょうか?」

1つ目の契約へ導くテクニックは、単純明快です。「Why don’t you V(動詞)」は「Vしてはいかがですか?」と提案を表すフレーズです。「give it a try」は「それを試してみる」と言う意味で、ここでは「契約をしてみる」の意味にになります。「試してみませんか?(結論)」と商談相手に伝えることで、契約への心理的なハードルを下げることができます。

それから、次のフレーズを加えると、さらに、成約率が高まります。

“And I’ll take care of all the details.”
「私が、細かな処理は全て私が引き受けます。」

「面倒なことをすべて引き受ける」と宣言することで、商談相手の契約合意の負担を下げ、商品の購入意欲を刺激します。

2)“Directive Close”「誘導クローズ」

2つ目の契約を成立させるテクニックは、“Directive Close”「誘導クローズ」です。商談相手に、商品の使い方やメリットを説明して、購入後の「疑似体験」をしてもらい、契約へと促す営業テクニックです。疑似体験の提供はとても強力です。商品への疑問点や懸念点を払拭し、購入意欲が高まることで、契約合意につながります。誘導クローズに使える英語表現は下記の通りです。

“Well then, the next step is this.”
「それでは、次のステップですが、こちらになります。」

「Well then, (それでは、)」は相手の注意を引くときのフレーズです。相手の注意を自分の話に引き付け、商品の解説をします。商談相手が、「I’ll take it!(商品を購入します!)」と話したら、すかさず、「And I’ll take care of all the details.(私が、細かな処理は全て私が引き受けます。)」のクロージングフレーズを使い、契約を締結しましょう。「誘導クローズ」は、トップセールスを誇る営業が最も使っているテクニックです。

3)“Authorization Close”「承諾クローズ」

3つ目の契約を成立させるテクニックは、“Authorization Close”「承諾クローズ」です。商談の最後に、サイン済みの契約書を取り出し、次のフレーズを言います。

“Well then, if you’ll just authorize this, we’ll get started right away!”
「あなたの承諾があれば、私たちはすぐに取引をスタートできます。」

営業が契約を促すことで、契約は成立します。営業が、商談相手に、契約までの道筋を示すことが重要です。

まとめ

ここまで、海外企業との商談に役立つ「営業テクニック」、特に、”反対意見を信用に変える”営業手法をご紹介しました。この他にも、契約の合意を促すフレーズについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

ビジネスでは自分の状況や意思をネイティブに伝えることが重要です。TPOに合わせた、正しいビジネス英語が使えるように、是非、この記事をお役立てください。


参考文献

The DooR「英語でオンライン商談を成立させる”コツ”は英語の論理!契約へ導く結論と理由から話すフレーズをビジネス英語講師が解説!
CLOUD SIGN「電子契約の普及率は67.2%ーJIPDEC・ITR2021年調査
Brian Tracy「Sales Process: How To Handle Objections And Use Closing Techniques
The Business Professor「Always Be Closing (Sales Strategy) – Explained
SALESFORCE CANADA「10 of the Best Sales Closing Techniques

【プロフィール】

Toshiyuki Takiuchi(瀧内俊之)

関西学院大学で言語学、英語学、欧米文化について学ぶ。アメリカのエモリー大学で演劇科を専攻し、プレゼンの手法、舞台演出について学ぶ。帰国後は、ビジネスシーンやハリウッド俳優の通訳、NHKドラマで英語指導を担当。その後、大手英語コーチングスクールにて指導経験を積み、独立。ビジネス英語コーチングジム「 The DooR(ザ・ドアー)」のパーソナルトレーナーとして、TOEIC® L&Rの指導を行い、3か月で375点のスコアアップを記録。世界で活躍する起業家を育てる「Global Challenge」でビジネス英会話の指導を行い、受講生が、200組のうち、4組の選抜組に入賞。シリコンバレーの海外投資家にプレゼンする権利を獲得させた。日本の俳優に対し、ハリウッド・ブロードウェイへの進出をサポートする英語指導も行っている。YouTubeチャンネルのトシ先生のハリウッド英会話【海外映画・ドラマ】で英語学習やプレゼンのノウハウについて配信中。

Joseph DeChicchis(デキキス・ジョー)

関西学院大学総合政策学部教授。アメリカのペンシルベニア大学で言語学、イタリアのボローニャ大学で記号論、イギリスのサセックス大学で認知科学を学ぶ。現在は言語学、人類言語学、欧米文化コミュニケーションの研究に従事。世界の英語アクセントに精通している。関西学院大学の研究生に対し、言語学や認知科学、英語習得法について指導している。The DooRでは、カリキュラムアドバイザーとして、発音矯正、文法理論、スピーキングスキルの強化など、受講生に対する英語コーチング指導のアドバイスや、教材の監修を担当している。

 

Mitsuru Arakawa(荒川満)

大学卒業後、大手人材紹介会社に入社。大阪支店にて人材紹介の営業に従事。同グループのイギリス法人にて営業マネージャーとして営業体制の再構築を担当、取締役に就任し海外法人の経営に携わる。帰国後、東京本社にて海外就職希望者の海外転職、日系企業の海外進出を支援する部門のマネージャーとして勤務。同社を退職後、シンガポールにてArchAgent Pte Ltdを設立し、代表取締役社長を務める。The DooRでは、グローバルキャリアアドバイザーとして、英語面接の対策、英文レジュメの作成、海外での起業など、キャリアアップに関する英語コーチング指導のアドバイスを行っている。

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