英語脳を鍛える「認知文法」と5文型の学習法!日本語と英語では世界の「見方」が違う理由

「英文法を習ったのに、英語がスラスラ話せない…」「5文型の使い分けができない」─そんなお悩み、ありませんか?

その原因は、“英語で考える”回路がまだできていないからです。ネイティブは、頭にある「イメージ」から直感的に英文を組み立てます。認知文法はこの思考パターンを“見える化”し、スラスラ話せる「英語脳」を育てるアプローチ。いわば、「話すための文法」です。

本記事では、英語の5文型を「エネルギーの流れ」というイメージで捉え直し、感覚で使い分ける方法をご紹介します。

目次

なぜ「run」が「鼻水が出る」と「会社を経営する」の意味になる?

早速ですが、以下の2つの例文を見てみましょう。

①My nose is running.「鼻水が出ている」
②I have run a company for six years.「会社を6年間経営している」

これらの文には、共通して動詞「run」が使われています。しかし、日本語にするとそれぞれ①「鼻水が出る」と②「会社を経営する」となり、全く異なる意味になります。なぜ同じ「run」なのに、これほど意味が変わるのでしょうか?

動詞の「コアイメージ」が英語脳を鍛える

例えば、「run」の核となるイメージは、「ある方向に継続的に動く」ことです。この中心的なイメージがあるからこそ、文脈によって様々な意味へと広がっていく、と認知文法では考えます。単語の意味を個別に丸暗記するのではなく、動詞の「コアイメージ」を捉えることで、英語を「イメージ」で理解し、「英語脳」を鍛えることができます。

動詞の「エネルギーの向き」を決める自動詞と他動詞の役割

英語の動詞は、その「エネルギーの向き」によって大きく「自動詞」と「他動詞」に分けられます。この概念が、同じコアイメージを持つ動詞が、なぜ異なる意味に変化するのかを理解する鍵となります。

自動詞とは?

自動詞は、主語自身が行う動作や、主語の中で完結する状態を表す動詞です。エネルギーは主語の内部にとどまり、外の対象に直接は働きかけません。例えば、「窓が割れる」や「ドアが開く」のように、主語が自ら動く(またはその状態になる)イメージです。

他動詞とは?

他動詞は、主語から出たエネルギーが、目的語という外の対象に直接ぶつかる動詞です。「〜を」動かす、といった対象への働きかけを表現します。例えば、「窓を割る」や「ドアを開ける」のように、主語が何かに働きかけて、その対象を動かすイメージです。

「run」の自動詞・他動詞の使い分け

ネイティブは、「My nose is running.」という文を、自動詞の用法で捉えています。「鼻から液体が継続的に動く(流れる)」エネルギーとしてイメージするわけです。鼻から液体が“走り出す”という動きを頭の中で再現することで、より感覚的に意味を掴むのです。

一方、「I have run a company for six years.(私は会社を6年間経営している)」という文では、主語の「I」が会社という対象に対して、runのコアイメージである「ある方向に継続的に動く」というエネルギーを向けていると捉えられます。つまり、「私」が会社を「継続的に運営し動かす」という他動詞的な働きかけを表現しているのです。

「話すための文法」:認知文法の基本概念

認知文法とは、アメリカの言語学者ロナルド・ラネカーが提唱した、「言葉は、私たちの考え方(認知能力)と深くつながっている」という視点で文法を捉えるアプローチです。従来の文法では、言葉をルールや構造の視点から捉えるのに対し、認知文法では、私たちの思考や経験が、言葉や意味の形成に直接影響すると考えます。

認知文法を学ぶことで、単語や文法の形が持つ「イメージ」や「エネルギーの流れ」を直感的に捉え英語をより自然に、感覚的に理解することを目指します。

英語の5文型を「エネルギー」の流れで捉える

認知文法では、言葉の表現を、話したい人が伝えたいことを「イメージ」するために、「エネルギーの流れ」としてとらえます。それぞれの文型は、異なる種類の「エネルギーの流れ」を表していると考えると、その意味が感覚的に理解できます。

第1文型 (SV):主語だけで完結するエネルギー

「主語(S)+動詞(V)」の形です。主語のエネルギーが、外の物には直接影響せず、主語の中で完結するイメージです。

例①:I walked along the river. (私は川沿いを歩いた)→ I「私」でエネルギーが完結
例②:She sleeps. (彼女は眠る)→ She「彼女」でエネルギーが完結

第2文型 (SVC):主語を具体的に「説明する」エネルギー

「主語(S)+動詞(V)+補語(C)」の形です。主語の状態や特徴などを説明します。主語と補語は、基本的には同じ存在や状態を示しています。これは主語を「説明する」エネルギーと言えます。補語には名詞か形容詞が来ます。

例①:I am a student. (私は生徒です)→ 「私」が「生徒」という存在であることを説明
例②:He became a teacher. (彼は先生になった)→ 「彼」が「先生」という存在になったことを説明
例③:She looks happy. (彼女は幸せそうに見える)→ 「彼女」が「幸せな」状態に見えることを説明
例④:The hotel was nice.(そのホテルは良かった)→ 「そのホテル」が「良かった」状態であることを説明

第3文型 (SVO):目的語に向かうエネルギー

「主語(S)+動詞(V)+目的語(O)」の形です。主語から目的語へとエネルギーが流れることを表し、何かを「他の物に働きかける」イメージです。主語の動きが、はっきりとした相手である目的語に直接影響を与えます。

例①:He moved the sofa into the room. (彼はソファを部屋に動かした)→ ソファーにエネルギーが向いている
例②:I opened the door. (私はドアを開けた) → ドアにエネルギーが向いている
例③:Please review the report.(そのレポートを確認してください)→ レポートにエネルギーが向いている

第4文型 (SVOO):二段階で伝わるエネルギー(「渡してあげる」イメージ)

「主語(S)+動詞(V)+間接目的語(I.O.)+直接目的語(D.O.)」の形です。主語からまず間接目的語(たいていは人)へ、次に直接目的語(物や情報など)へと、エネルギーが二段階で伝わることを示します。「誰かに何かをあげる」「教える」「見せる」といった、相手に何かを提供する動作によく使われます。文型全体が「何かを誰かに与える」という一つの意味を持つユニットとして捉えられます。

例①:My dad made me some sandwiches. (父が私にサンドイッチを作ってくれた)→ 作って渡す
例②:She’ll get you some coffee. (彼女があなたにコーヒーを一杯持ってくるからね) → 持ってきて渡す
例③:I gave him the ticket. (私は彼にそのチケットをあげた) → 与えて渡す
例④:She told me a secret. (彼女は私に秘密を教えてくれた) → 教えて渡す
例⑤:She sent her team the agenda.(彼女はチームに議題を送った)→ 送って渡す

第5文型 (SVOC):目的語を「〜の状態にする」エネルギー(3+2で考える)

「主語(S)+動詞(V)+目的語(O)+補語(C)」の形です。第5文型 (SVOC) は、第3文型 (SVO)第2文型 (SVC) が組み合わさったものと考えると良いです。この文型は、主語から目的語へ影響を与え、目的語が「どのような状態であるか」を補語が説明するエネルギーを表します。

例①:We call this flower “Yuri”. (私たちはこの花を「百合」と呼ぶ)→ We call this flower.(SVO)+ This flower is Yuri.(SVC)
例②:We painted the wall white.(私たちは壁を白く塗った)→ We painted the wall.(SVO)+ The wall was white.(SVC)
例③:They considered him indispensable.(彼らは彼を必要不可欠だと考えた)→ They considered him.(SVO)+ He was indispensable.(SVC)

認知文法を取り入れた英語学習法

認知文法の考え方取り入れると、私たちはただ文法のルールを覚えるだけでなく、自然に英語を理解し、使えるようになります。ここでは、この考え方を実際の英語学習にどう取り入れればいいか、具体的な方法を説明します。

日本語と英語の「考え方」の違いを意識

日本語を英語にする際、単語をただ置き換えるだけでなく、それぞれの言葉が持つ「思考パターン」の違い」をしっかり意識することが大切です。これが、自然な英語表現を身につける近道になります。

例えば、日本語では「彼と友達になった」と言う表現を英語では「I became friends with him.」と複数形で表現します。これは、日本語では、「自分から見た友達という存在」を主観的な視点で捉えるのに対し、英語は「二人が友達であるとう関係性」を、外から客観的に捉えるので、「friends」として表現します。このように、英語の「物の見方」を意識することが、より自然な英語を話す上で重要になります。

コアイメージを中心に、動詞や前置詞を理解する「英語脳」を身につける

動詞や前置詞などには、それぞれ核となる「コアイメージ」があります。コアイメージを文や会話の中でどのように使われるのかを意識して学ぶことで中心に単語や文法のルールを丸暗記せずに済みます。

例えば、動詞 get のコアイメージが「A→Bへの変化」です。まず、I got home late. (家に遅く着いた:第1文型) の場合、これは「場所の変化(移動)」を表し、「到着する」という意味になります。 次に、She got angry. (彼女は怒った:第2文型) となると、感情の「感情の変化」を表し、「〜になる」という意味になります。 そして、I got a new job. (新しい仕事を得た:第3文型) の場合、これは「新しい状態(仕事を得た状態)への変化」と捉えられ、「手に入れる」という意味になります。

このように、単語の持つ核となる「コアイメージ」を中心に理解し、英語脳を身につけることで、日本語訳を丸暗記せずに済みます。

前置詞「in」のコアイメージは「中に含まれている状態」です。物理的な空間の中に存在する「in the box (箱の中に)」はもちろんのこと、恋愛という状態の中に身を置く「in love (恋をしている)」、困難という状況の中にいる「in trouble (困っている)」といった表現にもこの「中に含まれている」というイメージが共通しています。

また、「on」のコアイメージは「何かに接触している状態」です。物理的にテーブルに接触している「on the table (テーブルの上に)」だけでなく、義務という状態に接している「on duty (勤務中で)」、時間という基準点にぴったり接触している「on time (時間通りに)」といった使い方も、このコアイメージから派生しています。

さらに、「at」のコアイメージは「ある一点、特定の場所や時点に焦点を当てる」ことです。駅という一点にいる「at the station (駅に)」、5時という時間の一点に焦点を当てる「at 5 o’clock (5時に)」、仕事という活動の一点に集中している「at work (仕事中で)」といった表現も、全てこの「一点」というイメージが基本になっています。

このように、動詞も前置詞もコアイメージを覚えることで、様々な文章を「英語のまま」理解ができるようになります。

「エネルギーの流れと意味のイメージ」を意識して英文を作る

「この動詞の後にはこの形が続く」といった暗記だけではなく、伝えたいイメージからぴったりの文型を選ぶ練習をしましょう。例えば、「誰かに何かを渡す」というイメージがあれば第4文型、「何かを〜の状態にする」というイメージがあれば第5文型、といったように意識します。これにより、正しい英文を作れるようになります。

体を使って意味をイメージする

言葉は私たちの体の感覚と深くつながっています。文法や語彙を頭で理解するだけでなく、体を動かしながらその「イメージ」を体験することで、より深く、直感的に身につけることができます。

動詞のコアイメージを体で表現する

動詞のコアイメージを体で再現するのも効果的です。たとえば “push(押す)” なら実際に手を前に突き出して押す動作を、“think(考える)” ならこめかみや額を指差す仕草を、“learn(身につける)” なら何かをつかむように手を動かすジェスチャーをしてみましょう。こうした身体的な動きとセットで単語を覚えることで、動詞に宿る「エネルギーの流れ」や「動きのイメージ」がぐっと鮮明になり、記憶にも定着しやすくなります。

前置詞の動きを体で表現する

前置詞の動きを体で表現してみるのも効果的です。inなら手で何かを包み込むようなジェスチャーをする、onなら手のひらを何かの上に置くようにする、throughならトンネルを通り抜けるように腕を動かす、など、具体的な動作と結びつけることでイメージを強化できます。

これらの動作をすることで、単語が持つや「イメージ」を体感し、記憶に定着させやすくなります。

認知文法を学び英語力を伸ばした受講生

認知文法を取り入れた学習で、どのような成果が得られるのか。実際に成果を出された受講生の方々の事例をご紹介します。

池田 椋さん(3 か月で TOEIC +240 点UP!大手グローバル企業に内定)

ビズイングリッシュコーチの受講生の池田椋さんは、認知文法や発音矯正のレッスンを通して、3か月でTOEICスコアが240点アップしました。英会話にも自信がついたトレーニング法について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

三枝万梨恵さん(英語への苦手意識を克服し、オーストラリアで活躍)

ビズイングリッシュコーチの受講生である三枝万梨恵さんは、英語学習がほぼ初めての状態からスタート。課題や認知特性に合ったトレーニングと学習サポートにより、英語への苦手意識を克服し、オーストラリアで勤務しています。詳しい学習法について知りたい方は下記の記事をご覧ください。

まとめ:認知文法を取り入れて「話せる」「使える」英語へ!

この記事では、英語の5文型を認知文法という新しい視点を取り入れて学習する方法をご紹介しました。認知文法では、5文型はただ文の構造を覚えるのではなく、それぞれが異なる「エネルギーの流れ」をイメージすることで、より直感的に意味を理解できます。

認知文法は、脳科学や言語学の最新研究からも、その効果が裏付けられています。 脳は、言葉を「単なるルール」として覚えるよりも、「イメージ」として捉えることで、より効率的に記憶し、引き出すことが分かっています。認知文法を学ぶことで、あなたは自信を持って英語を話せるようになるでしょう。

Q&A:瀧内コーチの一問一答

認知文法とは?

A. 認知文法とは、言葉を、ルールや構造としてではなく、私たちの考えや意味をイメージとしてとらえる文法理論です。 5文型を学ぶ際も、認知文法の視点を取り入れることで、英語を話す・聞く際に「なぜこの表現なのか」を直感的に理解できるようになり、英語を自然に使いこなせるようになるのです。

英語の5文型はもう覚えなくていいの?

A. 5文型の構造を覚えることは大切ですが、それ以上に、それぞれの文型が持つ「意味」や「エネルギーの流れ」を知った上で、様々な文章に触れることが大切です。これにより、伝えたい内容に応じて適切な文型を直感的に使えるようになります。音読や暗唱を通じて、この感覚を体得することで、自然と「話せる力」が身につきます。

効果はどのくらいで実感できますか?

A.個人差はありますが、認知文法はネイティブスピーカーの理解の仕方を学ぶアプローチであるため、数週間から数ヶ月で、「英語の表現が腑に落ちる感覚」を実感できます。 英文を組み立てる際の迷いが減り、ネイティブの表現がより理解できるようになるなど、「英語が使える楽しさ」を感じ始める方が多いです。

まずは何から始めればいいですか?

まずは、この記事で解説した「動詞のコアイメージ」と「5文型のエネルギーの流れ」を意識して、簡単な英文を声に出して読んでみましょう。 さらに、日常生活で伝えたいことを、「どんなイメージか」から考え、それに合う文型を選んで英文を組み立てる練習をすると効果的です。

TOEICやビジネス英語にも役立ちますか?

はい、非常に役立ちます 認知文法で「イメージ」や「エネルギーの流れ」を理解することで、TOEICの読解・リスニングで複雑な表現のニュアンスを正確に把握する力がつき、速読・速聴の効果もあります。 ビジネスシーンでは、自分の意図をより正確に伝えられるスキルが身につくため、自信を持ってコミュニケーションが取れるようになります。

参考文献

  • 山梨正明 編 (2021).『認知言語学論考 No.15』.ひつじ書房.
  • 坪井栄治郎・早瀬尚子 (2020).『認知文法と構文文法』 (最新英語学・言語学シリーズ13).開拓社.
  • 時吉秀弥 (2019).『英文法の鬼100則』.アスカカルチャー.
  • ラネカー, R. W. (2011).『認知文法論序説 Cognitive Grammar: A Basic Introduction』.山梨正明(翻訳).研究社.
  • 大西泰斗・ポール・マクベイ (2011).『一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法』.東進ブックス.
  • 今井隆夫 (2010).『イメージで捉える感覚英文法 ― 認知文法を参照した学習法』.開拓社.
  • 籾山洋介 (2010).『認知言語学入門』.研究社.
  • 安藤貞雄 (2008).『英語の文型-文型がわかれば,英語がわかる』.開拓社.
  • 大堀壽夫 編 (2004).『認知コミュニケーション論』 (シリーズ認知言語学入門6).大修館書店.
  • 中村芳久 編 (2004).『認知文法論2』 (シリーズ認知言語学入門4).大修館書店.
  • 松本曜 編 (2003).『認知意味論』 (シリーズ認知言語学入門5).大修館書店.
  • 山梨正明 (2000).『認知言語学原理』.くろしお出版.
  • 山梨正明 (1995).『認知文法論』.ひつじ書房.

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プロフィール

  • 専属パーソナルコーチ

    瀧内俊之
    (Toshiyuki Takiuchi)

    関西学院大学で言語学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学を修め、米国エモリー大学でアクセントトレーニングを研究。帰国後は海外営業や通訳、ハリウッド俳優への発音指導など、多彩な現場で実績を積む。その後、大手スクールでの指導を経て、受講生一人ひとりのニーズに合わせた英語コーチングを行うため、ビズイングリッシュコーチを設立。

  • 学習カリキュラム監修者

    デキキス・ジョー教授
    (Joseph DeChicchis)

    関西学院大学総合政策学部教授。言語学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学を専門とし、日本人が最短で英語を習得できる「時短学習メソッド」を開発。ビズイングリッシュコーチでは、受講生一人ひとりの課題に合わせたカリキュラムやオリジナル教材を監修し、学習効果を最大化するサポートを行う。

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