英語が聞こえない原因は5つの音声変化!マクドナルドの会話で「英語耳」を鍛えよう

留学当初、米国アトランタのマクドナルドで「コーラ」を頼んだら、想像をはるかに超える巨大な空っぽのカップが。「え、何これ?」と頭が真っ白になった瞬間、私は悟りました。英語が聞き取れないのは、単語を知らないとか、話すのが速いとか、そんな単純な理由からでありません。「音の変化」だと体感しました。

この記事では、アメリカでのマクドナルドでの会話の経験をもとに、英語のリスニング力を飛躍的に向上させるための「5つの音声変化」について解説し、日々の生活に取り入れられる効果的なトレーニング方法もご紹介します。

注文したのはコーラ、渡されたのは…?

エモリー大学での留学生活が始まったばかりの頃。お昼時になり、マクドナルドへ足を運びました。少し緊張しながらレジに立ち、はっきりとこう言ったつもりでした。

I’d like a Coca-Cola, please.
(コーラをお願いします)

ところが、店員さんが差し出したのは、想像していたよりもずっと大きく、しかもスカスカで軽いカップ。「え、これ何に使うの?」と、思わず顔に出てしまったと思います。

Excuse me, what’s this cup for?
(すみません、このカップは何のためのものですか?)

すると、店員さんは淀みなくこう答えたのです。
Would you need a straw?  This is for refills—you can go to the drink station to refill it for free.
(ストロー要りますか?これはおかわり用のカップです。あちらのドリンクステーションで無料でおかわりできますよ)

しかしそのときの私は、すぐには理解できませんでした。私の耳にはこのように聞こえました。
“ウジャジャニーダストロー? ディスイズファリフィルズ ユキャンゴウラドリンクステイション ダリフィリッファフリー”

一つ一つの単語は知っているはずなのに、それらが繋がった途端、全く別の言語のように聞こえる。一体なぜ、こんなにも聞き取れないのでしょうか?

“聞こえない英語”の正体─音声変化とは?

その原因こそが「音声変化」です。ネイティブスピーカーがごく自然なスピードで会話をする際、単語と単語が滑らかに繋がったり、本来発音されるべき音が省略されたり、文脈によっては弱く発音されたりするため、私たちが学校で習うような教科書通りのクリアな発音とは大きく異なる音の形になるのです。

ネイティブが自然なスピードで話すとき、音は以下のように変化します:

  • 単語の最後と次の単語の最初がくっつく現象。(連結)
  • 発音されるはずの音が抜ける(脱落)
  • 機能語が弱くなる(弱形)
  • /t/ や /d/ が弾かれる(ラ行)
  • 隣接する音に同化する(同化)

たとえば、先ほどの会話の中には、以下のような音声変化が潜んでいました。

音声変化IPA(カタカナ)
同化Would you [wʊdʒə(ウジャ)]
弱形for[fə(ファ)]
ラ行化 go to[ɡoʊ ɾə(ゴウラ)]
脱落drink の /k/ [drɪŋ(ドリン)]
連結 refill it [rɪfɪlɪt(リフィリット)]

これらの音声変化が複数重なると、ネイティブの英語は驚くほど別物のように聞こえてしまうのです。

※音声変化についてさらに詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

ネイティブらしいリズムと強弱 ― ストレスタイム・リズム

英語は強く読む「内容語(content words)」と弱く読む「機能語(function words)」が交互に現れるストレスタイム・リズムを持ちます。たとえば…This is for refills〔ディス イズ ファ RE fills〕のように、refills のREに強アクセント、this / is / for は弱アクセントになります。

ネイティブはこのリズムに乗って話すので、強弱のメリハリがはっきりし、機能語がさらに弱形になります。
トレーニングの際は、句をひとかたまりと捉え、強く読む語→弱く読む語→強く読む語のパターンを意識して音声をシャドーイングすると、音声変化のポイントがより鮮明に聴こえてきます。

地域別アクセントのバリエーション

アメリカ国内でも地域によって音声変化の度合いは異なり、聞こえ方に個性が出ます。たとえば、筆者が留学していたアトランタなどの南部訛りでは母音が伸びたり単母音化し、nice が [nɑ:s(ナース)] のように聴こえます。また、通訳の仕事で訪れたニューヨークやボストンの訛りでは語尾の /r/ が弱まり、car が [kɑː](カー)に近づきます。こうした違いを知っておくと、「標準英語」だけにこだわらず、様々なアクセントに対応できるようになります。渡米後はできるだけ多くの人と話して、多様なアクセントに耳を慣らしましょう。

アメリカ英語 vs. イギリス英語—発音の主な違い

留学や仕事先で出会う英語は、一般的なアメリカ英語(General American:GA)だけではありません。イギリス英語の標準発音(Received Pronunciation:RP)との主な違いを押さえておくと、より幅広いアクセントに対応できるようになります。

項目アメリカ英語 (GA)イギリス英語 (RP)GAとRPの発音
Rの発音常に発音(rhotic/rが立つ)語末は無音(non‑rhotic)car → [kɑr] vs. [kɑː]
Tの発音ラ行化が多いTの発音が残るwater → [ˈwɑɾər] vs. [ˈwɔtə]
Aの発音bath, dance の a は [æ]bath, dance の a は [ɑː]bath → [bæθ] vs. [bɑːθ]
Yの発音news → [nuz] (Yの発音なし)news → [njuːz] (Yの発音あり)news → [nuz] vs. [njuːz]

アメリカ英語とイギリス英語の発音の違いについてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

この短い会話に潜む変化を分解する

Would you need a straw?  This is for refills—you can go to the drink station to refill it for free.

この一文には、実に5種類の音声変化が含まれています。

・Would you → /wʊdʒə/ → ウッジャ(同化:/d/ と /j/ が融合し /ʤ/ となる)
・need a → /niːdə/ → ニーダ(連結:/d/ の後に a が来ることでスムーズにつながる)
・This is for → /ðɪs ɪz fər/ → ディスイズ ファ(for が弱形になり /fər/になる)
・you can → /ju kən/ → ユクン(can が弱形で /kən/ に)
・go to → /ɡoʊ ɾə/ → ゴウラ(/t/ がラ行化)
・the drink → /ðə drɪŋk/ → ザ ドリン(/k/ が脱落または弱化し、/drɪŋ/ に近くなる)
・to refill it → /tə riːfɪl ɪt/ → トゥ リーフィリッ(to, it が弱形・連結・脱落)
・for free → /fər friː/ → ファフリー(for が弱形)

各センテンスを一息で話されると、まるで暗号のように聞こえても不思議ではありません。

どうすれば聞き取れるようになる?

音声変化は「知っているかどうか」で聞こえ方が変わります。以下の3つの手順を繰り返すことで、耳は確実に鍛えられます。

ステップ1:Luvvoiceの「ゆっくり発音」を自作して聞く

実際のネイティブの雰囲気を保ちつつ、文字数無制限で無料かつ速度調整もできるLuvvoiceを使えば、以下の手順で「ゆっくり発音」を簡単に作成できます。

  1. スクリプトを用意
    例:Would you need a straw?  This is for refills—you can go to the drink station to refill it for free.
  2. Luvvoiceのサイトにテキストを貼り付け
    URL: https://luvvoice.com (無料で登録不要)
  3. 言語を英語、音声を選択
    ネイティブに近いアクセントの音声モデルを選びます。
  4. 再生速度を0.5倍速もしくは、0.75倍速に設定
    プレイヤーの再生速度調整機能で聞き取れる速さに調整します。

ステップ2:ネイティブの自然な速さで聞いてみる

  1. 同じスクリプトを再度 Luvvoice に貼り付け
  2. 再生速度を 1倍速(ノーマル)に戻す
  3. ステップ1の “ゆっくり発音” と交互に再生

→ ゆっくり⇔1倍速の切り替えで、「どこがどう変化しているか」がはっきりと見えてきます。

ステップ3:音の変化を分析する

音がどこで消えたか、どこで連結したかを、実際にスクリプトと照らし合わせて確認します。

慣れてきたら、自分でも発音してみましょう。録音して聞き返すことで、「あ、自分も音声変化が再現できている!」という感覚が身についていきます。

5. 日常の中で“聞く力”を鍛える3つの方法

① シャドーイング

ネイティブの音声を聞きながら、聞こえた英文を遅れ1~2語程度で“影”のように即時復唱する学習法です。リスニングと発音リズムを同時に鍛えられます。

  • 即時復唱:一度まとめずに、聞こえたそばから声に出す
  • 短いフレーズ:5~10語程度を一区切りにして追いかける
  • 繰り返し:同じフレーズを何度もシャドーイングし、変化やイントネーションを身体にしみ込ませる。

② YouTubeで字幕チェック

苦手な発音を含むフレーズを練習する際、YouGlishというツールを使うと、様々なネイティブスピーカーが実際にそのフレーズを発音している動画を検索できます。そのため、文脈ごとの発音の違いや、話し手による発音の個性を比較しながら、より実践的なリスニング練習を行うことができます。

③ ワークシートを使って復習

聞き取れなかったフレーズや、特に聞き取りにくかった部分を記録するための専用ワークシートを作りましょう。ノートには、以下の項目を作っておくと効果的です。

  • 日付: いつ学習したフレーズか記録することで、後から振り返って復習する際に便利です。
  • 元のフレーズ: ネイティブが話した実際のフレーズを書き留めます。
  • 聞こえた音: 自分がどのように聞こえたかをカタカナなどで記録します。(例: “Did you” → “ディジュ”)
  • 音声変化の種類: どの種類の音声変化が起きていたかを分析して記録します。(例: 連結、脱落、弱形など)
  • 解説: なぜそのように聞こえたのか、音声変化のルールなどを簡単にまとめます。
  • 練習ポイント: 自分が特に注意すべき発音のポイントなどをメモします。

このノートを定期的に見返すことで、音のつながり方や音が消えるパターンの理解が深まり、リスニング力が着実に向上します。また、書き溜めたノートは、自分の苦手なパターンを把握する「世界に一つだけのあなた専用の教材」となります。

6. まとめ:音声変化は“トレーニング”によって身につく

英語を聞き取れないのは、知らない単語が多いからでも、話すスピードが速いからでもありません。

音が消える・弱くなる・つながるという「英語の音のルール」を知らないことや、それに慣れるトレーニングが不足していることが最大の理由です。

実は私は、大学で英語音声学を学び、音声変化についての知識はありました。連結(liaison)や脱落(elision)、弱形(weak form)といった現象の理論は頭に入っていたのです。それでも、音声変化を意識したトレーニングが不足していたため、マクドナルドの店員の会話が聞き取れなかったのです。

しかし、音声変化を意識してリスニングのトレーニングを始めると、今まで聞き取れなかった英語が驚くほど自然に耳に入ってくるようになり、聞き取れる英語の幅が格段に広がりました。

7. 次のステップ:ビズイングリッシュコーチの体験レッスンへ

音声変化を自然に習得するには、実践の場でフィードバックをもらうのが最も効率的です。「自分だけで練習するのは不安…」という方は、ビズイングリッシュコーチの体験レッスンをご受講ください。

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ビズイングリッシュコーチは、関西学院大学のデキキス・ジョー教授と、同教授から言語学を学んだ代表の瀧内俊之(専属パーソナルコーチ)によって設立された英語コーチングスクールです。瀧内は、通訳や海外営業としてさまざまなビジネスシーンで英語を活用し、英語コーチとして多くの受講生の英語力を向上させてきました。さらに、国内およびシンガポールで人材紹介会社を経営している荒川満氏(キャリアアドバイザー)がコーチングチームに加わり、短期間で実践的なビジネス英会話を習得できる高品質なカリキュラムを提供しています。

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プロフィール

  • 専属パーソナルコーチ

    瀧内俊之
    (Toshiyuki Takiuchi)

    関西学院大学で言語学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学を修め、米国エモリー大学でアクセントトレーニングを研究。帰国後は海外営業や通訳、ハリウッド俳優への発音指導など、多彩な現場で実績を積む。その後、大手スクールでの指導を経て、受講生一人ひとりのニーズに合わせた英語コーチングを行うため、ビズイングリッシュコーチを設立。

  • 学習カリキュラム監修者

    デキキス・ジョー教授
    (Joseph DeChicchis)

    関西学院大学総合政策学部教授。言語学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学を専門とし、日本人が最短で英語を習得できる「時短学習メソッド」を開発。ビズイングリッシュコーチでは、受講生一人ひとりの課題に合わせたカリキュラムやオリジナル教材を監修し、学習効果を最大化するサポートを行う。

  • キャリアアドバイザー

    荒川満(Mitsuru Arakawa)

    大手人材紹介会社でキャリアを積み、欧米・アジアの人材紹介や海外進出支援で豊富な実績を築く。退職後はシンガポールにてArchAgent Pte Ltdを設立し、国内外の外資系・グローバル企業への転職をサポート。ビズイングリッシュコーチでは、英語面接対策コースを監修し、転職活動における英語面接の実践力向上を支援している。

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