英語が苦手な人こそ「タイニーハビット(小さな習慣)」で学習が継続できる

「英語が苦手」と感じる本当の理由とは?
「英語が苦手」「英語アレルギー」と感じる人が多いのは事実ですが、その原因は必ずしも英語力が足りないからだけではありません。多くの場合、英語学習を「始めること」「続けること」に対する心理的な壁が原因です。
また、完璧主義や「英語ができない自分はダメだ」という思い込みも、不安感を増幅させ、学習の妨げになります。こうした心理的な負担が、「英語アレルギー」と呼ばれる強い拒否反応を起こしていると考えられます。
※第二言語習得(SLA:Second Language Acquisition)では、学習者の心理的ハードルが学習効率を大きく左右することが示されています。例えば、スティーブン・クラッシェンの「アフェクティブ・フィルター仮説」では、不安や緊張が高い状態では脳に入ってくる言語情報にフィルターがかかり、学習効率が低下するとされています。つまり、「英語が苦手」「恥ずかしい」「どうせ続かない」といったネガティブな感情が、学習の妨げになっている可能性があるのです。
しかし、信用できる理論に基づいた学習方法に出会うことで、英語アレルギーだった人が英語学習を楽しめるようになるケースも少なくありません。この記事では、英語学習の心理的ハードルを下げ、継続を容易にするための「タイニーハビット」をご紹介します。このメソッドを理解し実践することで、「英語が苦手」という思い込みを克服し、英語学習をスムーズに進められるようになるでしょう。
第二言語習得(SLA:Second Language Acquisition)とは、母語とは異なる言語を後から習得する過程や仕組みを研究する学問領域です。学習者がどのように語彙・文法・発音などを身につけ、言語の運用能力を高めていくかを、言語学・心理学・教育学などの観点から明らかにします。
「タイニーハビット」とは?英語学習への応用

「タイニーハビット(小さな習慣)」は、スタンフォード大学の行動科学者である BJ・フォッグ博士が提唱した習慣形成のメソッドです。ごく小さな行動を、日常の既存の習慣(アンカー)に結びつけ、成功を実感する(祝福する)ことで、無理なく行動を継続していく方法として知られています。
このメソッドが英語学習に特に効果的な理由は、「始める」という最初のハードルを下げることができるからです。「今日は2時間英語を勉強しなければ」と思うと気が重くなりますが、「通勤時間に単語を5語覚える」と考えれば、心理的な負担が大幅に軽減されます。
実際に作業を始めると、脳の「側坐核(そくざかく)」という部分が刺激され、ドーパミンが分泌されます。このドーパミンがモチベーションを高める役割を果たし、「やる気」が生まれるのです。結果として、予定していた以上に長く集中して学習を続けられるようになります。
以下では、「タイニーハビット(小さな習慣)」の観点から、英語学習を続けやすくするための具体的なポイントをさらに掘り下げて解説します。基本の流れは「アンカー(既にある習慣と紐づける)」「小さな行動」「祝福(成功体験の実感)」の3ステップ。これを意識することで、心理的ハードルを下げながら英語学習を日常に取り入れられます。
タイニーハビットの基本プロセス
- アンカー(既にある習慣と紐づける)
すでに定着している習慣・行動を起点にする。
例:歯磨きを終えたあと、コーヒーを淹れた直後、机に向かった瞬間など。 - 小さな行動
大きな目標ではなく、わずか数秒~1分程度で終わるほどの「小さな行動」を設定する。
例:英単語を1つだけ覚える、英語のフレーズを1回だけ音読するなど。 - 祝福(成功体験の実感)
小さな行動を達成したら、すぐに「やった!」「できた!」と自分を肯定するリアクションや感情表現をする。ポーズを取ったり、心の中でガッツポーズをしたり、実際に声に出して褒めたりするのも有効。
このシンプルな仕組みにより、学習の「始める」ハードルを一気に下げ、さらに達成感(成功体験)を高めることで行動を続けやすくするのです。
英語学習においては、たとえば以下のような形で応用できます。
- 「歯磨きを終えたら、英単語を1つだけ覚える」
- 「電車に乗った直後に、英語のフレーズを1回だけ音読する」
- 「コーヒーを淹れたら、英語の短いニュースを1分だけ聴く」
こうした「小さな行動」を習慣化し、継続していくことで、「英語に触れない日」をなくし、英語学習を自然に生活の一部に組み込み、習慣化することができます。
アンカーを設定する
小さな行動を忘れずに続けるためには、日常で既に行っている習慣に「紐づける(アンカー)」方法が効果的です。「何かの直後に必ず行う」という形で行動をセットにすると、「やらなきゃ」と思い出さなくても自動的に行動できるようになります。
例:アンカーとして使いやすい行動
- 歯磨きが終わったら → 英単語を1つ確認する
- コーヒーを淹れたら → 英語のフレーズを1回だけ音読する
- 電車に乗った直後に → 英語アプリを起動して1分だけ使う
- 昼食後にデスクに戻ったら → 1分だけ英語の音読をする
こうしたアンカーがあると、忙しい日でも「アンカーの行動後は英語をちょっとやる」という流れができ、自然と学習を始めやすくなります。
最初は簡単な作業から始める
「タイニーハビット」の肝となるのが、「最初の行動をとにかく小さくする」という考え方です。大きな目標を設定するとモチベーションが必要になり、挫折しやすくなります。そこで、わずか数秒〜1分程度で終わる行動を設定するのです。
例:英語学習に当てはめると
- 既に知っている単語を1つ復習する
- 短い英文を1フレーズだけ声に出す
- 英語のアプリを1分だけ起動してみる
- 英語の歌を1分だけ聴く
- 英語の短い動画を1分だけ観る
「たったこれだけ?」と思うくらい小さな行動を設定するのが重要です。ハードルをできるだけ下げることで「とりあえずやってみよう」という気持ちを起こしやすくなり、学習を始める最初の壁を乗り越えやすくなります。
必ず達成を「祝う」
小さな行動をしたら、すぐに「自分を褒める」「やった!」と心で叫ぶなど、達成を祝います。「たった1分の勉強でも?」と思うかもしれませんが、このポジティブな感情が継続に大きく寄与します。
- 心の中で「よし!」とつぶやく
- 「いいね!」ポーズをしてみる
- 1分でできた自分を素直に認める
こうした小さな成功体験を何度も重ねることで、「もっとやりたい」「もう少し続けよう」という気持ちが自然と湧いてきます。
達成感を記録する
タイニーハビットで行動に移せたら、その日の成果や感想を簡単に書き留めておくと、次の学習へのモチベーションが高まります。
- 「今日は1分のつもりが5分勉強できた!」
- 「新しい英単語を10語も覚えた」
- 「覚えたフレーズの音読が思いのほか楽しかった」
これらの小さな成功体験が積み重なると、「意外と英語学習って楽しいかも」「思ったより続けられる」と、前向きな気持ちが生まれやすくなり、英語アレルギーから脱却するきっかけにもなります。
「タイニーハビット」と英語コーチングの相乗効果
「タイニーハビット」を活用した自己学習は非常に効果的ですが、これに専門的なサポートが加わるとさらに効果が高まります。特に注目したいのが、近年人気の「英語コーチング」サービスとの組み合わせです。
英語コーチングとは
英語コーチングとは、専属のコーチが個人に合わせた学習プランを作成し、定期的なフィードバックと継続的なサポートを提供するサービスです。「英語コーチングは、英語学習のパーソナルトレーニング」であり、「専任コーチが、一貫して学習のフォローを行い、生徒様の目標実現を目指して伴走」します。
英語コーチングの主な特徴としては、以下のようなものがあります:
- 個人に最適化された学習プランの作成
- 専属コーチによる定期的なフィードバックと伴走型のサポート
- 学習の進捗管理とプランの調整
- モチベーションを保つための心理的サポート
- 効率的かつ実践的な学習方法の指導
「タイニーハビット」と英語コーチングの効果的な組み合わせ方

以下のように、「タイニーハビット(小さな習慣)」と英語コーチングを組み合わせることで、より効果的な英語学習ができます。
1. コーチによる「小さな行動」の設計サポート
「タイニーハビット(小さな習慣)」の核となる「小さな行動」は、英語学習でも極めて有効ですが、初めのうちは「どんな行動が適切なのか分からない」という人も少なくありません。コーチがあなたの目標や性格、生活パターンをもとに、「歯磨き後に単語を1つ覚える」など、継続しやすい行動設計 をサポートします。
2. アンカーの選定と調整
日常習慣と学習を結びつける「アンカー」の選び方も、習慣化のカギを握ります。「どのタイミングで行動すれば続きやすいか」「やりやすい時間帯や流れはどこか」といった点について、コーチと一緒に検討・微調整 できるのは大きな強みです。
3. 成功体験の定着をサポート
「タイニーハビット(小さな習慣)」では、「できた!」という成功体験を即座に肯定することが重要です。コーチと学習の進捗を共有することで、毎日の小さな達成感を振り返り、言語化する習慣 がつきやすくなり、継続へのモチベーションが高まります。
4. 習慣化の壁を一緒に乗り越える
「今日はやる気が出ない」「忙しくて学習が後回しになる」という場面は誰にでもあります。そんなとき、コーチが「それでも1分だけやってみましょう」「今日の目標は1フレーズだけです」といった具体的な提案をくれることで、挫折せずに学習を続けることができます。
5. 習慣を見える化し、記録と振り返りを習慣に
「今日はこれができた」「思ったより続いた」といった小さな記録を残していくと、成長が“見える化”されて自信につながります。コーチがその記録にフィードバックをくれることで、達成感がさらに強化され、習慣化が定着します。
「英語が苦手」を克服した実例から学ぶ
筆者が英語コーチを務める「ビズイングリッシュコーチ」では、「タイニーハビット(小さな習慣)」を活用することで、英語が苦手だった方でも着実に成果を上げた事例が多数あります。ここでは、その中から代表的な2つをご紹介します。
事例1:ゼロから英語力を伸ばし、オーストラリアで就職した受講生
三枝万梨恵さんの挑戦は、私にとっても深く印象に残っています。英語に自信がなかった彼女は、「ゼロから英語力を伸ばし、オーストラリアで仕事がしたい」という目標を掲げ、コーチングを通じて着実に力を伸ばしていきました。
筆者は、彼女が無理なく学習を続けられるように、「まずは1分だけ」「今日覚えるのは単語5語だけ」といった小さな目標を設定し、毎日達成感を得られる仕組みを作りました。発音矯正のレッスンを通じて、彼女の「ELSA Speak(エルサスピーク)」のスコアが41から75へと大幅に向上しました。これは英語中上級者レベルに相当します。ELSA Speakは、世界で1400万人が利用する発音診断アプリで、短期間でスコアを伸ばすのは難しいと言われているため、素晴らしい成果だと言えます。
最初は「こんな私にできるだろうか」と不安そうだった三枝さんが、小さなステップを一つずつ積み重ねることで、自信と実力を身につけ、オーストラリアでの就職という目標を達成されたことは、コーチとして非常に嬉しい経験でした。

事例2:「絶対無理」から「やればできる」へ。英語で商談ができた受講生
廣重元子さんは、英会話に苦手意識を持ちながらも、米国企業との商談できるようになるまでに成長されました。海外事業への挑戦を考えていた中で実際に商談の機会が訪れ、「やるしかない」と決意され、私のコーチングを受講されました。筆者は、短時間で取り組めるフレーズ練習や発音トレーニングなどを日常に取り入れていただけるよう設計し、忙しい経営の合間にも無理なく学習を継続できるようサポートしました。
その結果、最初は英会話に不安を抱えていた廣重さんが、「やればできる」という自信を持たれたことは、今でも鮮明に覚えています。

英語学習を継続するために有効な方法
「タイニーハビット」は英語学習を始める上で非常に有効な手段ですが、長期的に英語力を向上させるには、他にも様々な効果的な方法を取り入れる必要があります。ここでは、英語学習を継続し、さらに上達するための方法をいくつかご紹介します。
最新技術を活用した学習ツールの利用

第二言語習得(SLA:Second Language Acquisition)の最新の研究で、AI技術やVR・ARなどの先端技術を活用した学習方法が注目されています。例えば、AI英会話アプリを使えば、「人間の講師相手だと緊張して何を言えばいいか分からない」「間違えるのが恥ずかしい」という初心者の悩みを解消しながら、英会話の練習ができます。
また、発音認識AIを搭載したアプリを使うことで、自分の発音を客観的に評価してもらい、改善点を把握することができます。筆者の指導でも使用している「ELSA Speak(エルサスピーク)」では、短時間で発音の学習や英会話をすることができます。
パーソナライズされた学習プランの活用
英語学習の成果を最大化するためには、「自分の課題・目標に合った学習内容」を選ぶことが不可欠です。たとえば、リスニング、語彙力、ビジネス英語、スピーキングでは、必要な学習プランが異なります。
- リスニング力を強化したい場合
・朝のコーヒータイムに、英語のポッドキャストを1分間聴く
・通勤中に、英語のニュースを1記事だけ聞く - 語彙力を増やしたい場合
・昼食後に、新しい英単語を1語覚える
・寝る前に、覚えた単語を1語復習する - ビジネス英語を習得したい場合
・出社前に、ビジネス英語のフレーズを1つ確認する
・会議前に、関連する英語表現を1つ練習する - スピーキング力を上げたい場合
・歯磨き後に鏡の前で決まり文句を1フレーズ口に出す(例:”Let me think about it.”)
・昼食後に今朝あったことを1文だけ英語で独り言
これらの小さな行動を日常の習慣に組み込むことで、無理なく英語学習を継続できます。
「英語が苦手」から「英語が楽しい」へ変わるためのマインドセット
最後に、「英語が苦手」という思い込みから脱却し、「英語が楽しい」と感じるためのマインドセット(考え方)について考えてみましょう。
「完璧主義」から「行動主義」へ
英語学習において陥りがちなのが「完璧主義」です。「文法を完璧に覚えてから話そう」「ネイティブのように発音できるようになってから人前で英語を使おう」と思ってしまうと、学習のハードルがどんどん上がってしまいます。
代わりに「行動主義」を採用し、日々の小さな行動や進歩を重視しましょう。タイニーハビットの基本理念がまさにこれで、「1フレーズ話せればOK」「昨日より少し上達していればOK」という気持ちで、小さな成功を積み重ねていくのです。
「義務」から「好奇心」へ
英語を「やらなければならないもの」と捉えると、どうしてもモチベーションが下がりがちです。そこで、「世界中の情報を得られるツール」「海外の人と交流できる手段」としてのポジティブな側面に目を向けましょう。
好きな映画や音楽、スポーツなど、自分が興味を持てるトピックを英語で探求するのもおすすめです。「たった1分だけでも、英語で好きなことを楽しむ」と意識してみると、学習が「勉強」から「趣味」へと変化しやすくなります。
「孤独な学び」から「共有する学び」へ
英語学習は一人で黙々と取り組むものというイメージがありますが、他の学習者と経験や成果を共有することで、モチベーションが大きく高まります。SNSでの発信はもちろん、友人や学習仲間との会話、コーチとの振り返りなど、誰かと学びを分かち合うことで、「自分だけの学び」が「共有する学び」になります。
「タイニーハビット」を活用して始めた英語学習の成果を、定期的に誰かと共有する習慣を作ってみましょう。「タイニーハビット」で積み上げた小さな成功を誰かと共有することで、「頑張った自分」を認めてもらうことで、学習意欲が高まります。
まとめ:「タイニーハビット」で英語学習を楽しく継続しよう
この記事では、「英語が苦手」という思い込みを克服し、英語学習を楽しく継続するための方法として「タイニーハビット(小さな習慣)」を紹介しました。BJ・フォッグ博士の理論に基づくこのメソッドは、「アンカー(既存の習慣との紐付け)」「小さな行動」「祝福(成功体験の実感)」という3ステップで、学習のハードルを下げ、かつ達成感を高めるのが特徴です。
「タイニーハビット」と英語コーチングを組み合わせることで、より効果的な学習が期待できます。専属のコーチからパーソナライズされた学習プランや継続サポートを受けながら、ごく小さな行動を積み重ねることで、英語が苦手だった人でも短期間で飛躍的に英語力を伸ばすことが可能です。
最後に、英語学習を楽しく続けるためのマインドセットとして、「完璧主義」から「行動主義」へ、「義務」から「好奇心」へ、「孤独な学び」から「共有する学び」へとシフトする考え方を提案しました。小さな一歩を踏み出し、その成功をしっかり祝福する。この繰り返しによって、英語アレルギーを克服し、「英語が楽しい!」と思えるようになるはずです。
あなたも今日から、ほんの1分、いや10秒でも構いません。「タイニーハビット」の考え方を取り入れて、「英語に触れる」小さな行動を始めてみませんか? その小さな一歩が、大きな変化につながるはずです。
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プロフィール
- 専属パーソナルコーチ
瀧内俊之
(Toshiyuki Takiuchi)関西学院大学で言語学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学を修め、米国エモリー大学でアクセントトレーニングを研究。帰国後は海外営業や通訳、ハリウッド俳優への発音指導など、多彩な現場で実績を積む。その後、大手スクールでの指導を経て、受講生一人ひとりのニーズに合わせた英語コーチングを行うため、ビズイングリッシュコーチを設立。
- 学習カリキュラム監修者
デキキス・ジョー教授
(Joseph DeChicchis)関西学院大学総合政策学部教授。言語学、英語音声学、英語文化コミュニケーション学を専門とし、日本人が最短で英語を習得できる「時短学習メソッド」を開発。ビズイングリッシュコーチでは、受講生一人ひとりの課題に合わせたカリキュラムやオリジナル教材を監修し、学習効果を最大化するサポートを行う。